読書

出張一気読み(25)アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

Mohmongar
フィリップ・K・ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」。いわずとしれたリドリースコット監督の映画「ブレードランナー」の原作。閉塞した世界に生きる主人公が、鬱屈しながらも賞金稼ぎというバイオレンスな稼業をもって前向きに生きていく物語、と書けばたしかに映画向けなシナリオといっていいだろう。しかしながらこれは「あの」ディックなのでそうは問屋が卸さない。まず背景に転がる大量のSF的ガジェット群やシチュエーション。チープさを感じながらも、いかにもありそうなアイテムは読者の現実感を浮遊させる。荒廃する世界から人々が動物に対する感情移入を異常に求める様は若干ついていけないところもあるが、現実味を帯びており世界観に厚みを増している。そしてデッカードが自らに疑いを抱いていくガーランド警視からフィルにフォークカンプト検査を行っていくくだりまでの、見事なまでの現実否定感(反転感?)はディックの真骨頂といっていいだろう。極めつけはマーサー教の真実と嘘。マーサーの受難を追体験する行為が、デッカードにおける山上の変貌またはゴルゴタを示しているのか読者それぞれによって判断してもらいたい。これでもかというほど要素をぶちこんで出来上がった作品はいつものディック作品というのはご愛敬だが、これを読んだころはまだまだ学生の多感なころ中二病さながらなほどにディックに傾倒していたことは、いまとなっては恥ずかしくもあり懐かしい思い出である。ちなみに自分が読んだのは右の旧装丁版である。最新のハヤカワ文庫の表紙はなんかかっこよくてディックじゃない(笑)

出張一気読み(24)ソフトウェア・ウェットウェア・フリーウェア

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ルーディ・ラッカー著、「ソフトウェア」「ウェットウェア」「フリーウェア」のウェアシリーズ3部作(最新Realwareは未翻訳)。ラッカーの名前を初めて知ったのはこの「ソフトウェア」からだが、人の知性(?)がソフトウェアとして再現(実行)可能というアイデアをここまで数学的かつ現実的かつ即物的に表現したのを見たのは私はこれが初めて。これまで知性をコンピューターへ移行する行為にはどうしても超常的または非日常的で大仰な雰囲気が付きまとっていたが、本作品群では、PCでファイルをポンとコピーする具合にあっけなく行われる。「ソフトウェア」では結構な情報工学・生化学的蘊蓄を込めて「コッブ」を「脳みそ」から「ソフトウェア化」していくが、大本は「知性ってPC上で走るプログラムと変わんないよね。」っていうことをあたりまえとして描いた、私にとっては初めての作品。目から鱗というか、そうだよねうんうん、と妙に納得した学生時代を思い出した。「ウェットウェア」では「マンチャイル」の殉教?にマッドな自分を感じたし、今回フリーウェアは初めて読んだが、「ウイリィ」の開発した「リンプウェア」使ってDIM作りたい!、ってプログラマとしての業を呼び起こされるという、いちおうエンジニアである自分にとっては感慨深いシリーズであります。理科系なら読んで損はなし。本シリーズの新作Realwareはまだ未翻訳で、いつか読める日がくるかなぁ。

出張一気読み(23)「進化した猿たち」

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星新一著「進化した猿たち」。久しぶりに出張なんで読む。子供のころ読んだことがあったが、今更読みたくなったので、アマゾンで探したところ古本市場であったのポチる。海外の1コマ漫画を著者がテーマごとに分類して解説していく。子供のころ読んだときには漫画部分がメインで文字部分なんて読み飛ばしていたが、今ではこの星氏の解説がとても心地よい。コレクターとしての氏のこだわりもさることながら、漫画に絡めて、展開される氏の小ネタがいい味を出している。ちなみに買ったのは古本なので裏に当時の価格が印刷されているが、昭和57年発行で320円。今ならこの厚みなら600円くらいかなぁ・・

裁断失敗

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この裁断機を買ってから、切る手間がほとんどかからないため、土日に定常的に自炊を行ってきましたが、先日ついうっかり裁断位置を間違えてしまい、1冊おしゃかにしてしまいました。うう、もったいない。切れ味が良すぎるのも考えものです。

出張一気読み(22)「奇面館の殺人」

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綾辻行人の「奇面館の殺人」。とあることで出張先で時間待ちが生じたので本屋で暇つぶしの本を漁ったら文庫新刊で出てたので迷わず購入。とある富豪にある共通点から招待された客たちが雪の山荘に閉じ込められ、奇妙な仮面をかぶらされつつ怪しげな殺人事件に巻き込まれる・・・ベタベタな推理小説的シチュエーションで繰り広げられる推理ドラマが、綾辻らしく幻想的かつ論理的に進んでいきます。最後に思いもよらない叙述トリックが・・・いわゆる新本格派のひさしぶりの館シリーズ第9弾。話としてはすごく面白いのですが、上下巻にしてはちょっと密度薄く感じる。館シリーズのトリックの源であり、幻想的世界観のバックグランドたる建築家 中村清司の呪いも今回いまいち影が薄かったです。第10弾まであと1作!で焦ったのか?とはいえ私にはあの叙述トリックは最後まで気づきませんでした・・・

出張一気読み(21)

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[amazonjs asin="4150105294" locale="JP" title="永遠のチャンピオン (ハヤカワ文庫 SF 529―エレコーゼ・サーガ1)"]マイクル・ムアコック著「永遠のチャンピオン」。エルリック、コルム、ホークムーンなどムアコックのヒロイックファンタジーシリーズをつなぐ概念たる《永遠のチャンピオン》の本質を語るエレコーゼ・サーガの一巻。20世紀の生きるジョン・デイカーが別の時代・次元の人類に召喚され人類のチャンピオンとして戦いながら、愛と義務と宿命との間にさいなまれていき、そしてついにある決断をなす・・・。コルムシリーズと同じ時期のこのころのムアコックの作品は人類に対する諦観というか憎悪が感じられ、読んでいくるとちょっと暗澹としていきますが、その中でチャンピオンが象徴的な何かしらを成しとげるので、ある意味すっきりした作品です。ただその結果の是非はおいとかないといけませんが・・・

出張一気読み(20)

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京極夏彦「豆腐小僧双六道中おやすみ」。前作、豆腐小僧ふりだしの続編です。前回で親探しの旅?を終え、新たに豆腐小僧が達磨と共に修行の旅に出ますが、幕末を背景に武田の隠し財宝を狙う悪党たちのひと騒動と、複雑にからみあいながら、いつもの京極節であれよあれよと物語が紡がれていきます。本来、人間側の騒動は概念たる妖怪達になんら関係はないのですが、主体たる人間たちに振りまわされて妖怪達も右往左往。今回は消えない豆腐小僧達の謎も明かされ、大団円といったところですが、最後はいまいちぱっとしない終わり方なのはまだ続編を続けるためかな。

裁断機で一刀両断

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出張一気読み本がぼつぼつたまってきたが、どうしても億劫でスキャンをさぼりがち。すこしでも手間を省こうとなにかいいもの探してたら、安いながら本格的な裁断機を見つけたので購入した。切れ味すげえ。カッター式裁断機だと本を事前に分割してからなので、どうしても時間がかかるが、これならセットして一発で裁断完了。京○本くらいの本もズばっと切れる。ちょっと気持ちいいです。でもでかいので置き場所困り、嫁さんに睨まれてます。 追伸)裁断が早くなったのは確かだが、その分スキャンの手間が目立つことに。スキャンも一気にできるのが欲しくなったが、さすがに当分は我慢だ。

出張一気読み(19)「闇の喇叭」

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有栖川有栖の「闇の喇叭」。いつもの火村教授シリーズとは違ってWW2戦後南北分断された日本というifワールドで、探偵業が違法化された社会で、当局の網を掻い潜りながら、謎を解いていくという異色ミステリ。個人的に有栖川有栖といえば読みやすいタッチのイメージだったんですが、最初にこの本を読んだときは、ifワールド説明のためかあふれる架空設定のインフォダンプで「あれミステリじゃなくて、架空戦記物だっけ?」とちょっと読むのに間をあけてしまいました。まあ読み進めていくうちにいつもの有栖川ワールドなんですが、最初はちょっと戸惑うかもしれません。

出張一気読み(18)声の網

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星新一の「声の網」。ご多分に漏れず私も小学生のころに星新一に出会い、かなりの作品を読み倒してきましたが、なぜかこの作品は読み逃しておりましたが、ふとしたタイミングで目にとまり、我慢できなくなったのでポチりました。いやはや今現在世に出ているコンピューター知性およびネットもののアイデアはすべてこの作品で網羅されております。1970年の時点でここまで正確に未来予測図を描き切った星新一恐るべし。もちろんメインガジェットが電話ベースなのはいたしかたないですが、アプリケーション的には現代のスマホ文化にはなんら遜色ありません。改めて星新一の偉大さを思い知りました。